インターネットは、私たちの生活に欠かせないツールとなりました。
しかし、ネット上では、顔が見えない相手とコミュニケーションをとるため、ついつい言葉づかいや態度が乱れてしまうことがあります。
使い方を誤れば、炎上や誹謗中傷などのトラブルに巻き込まれてしまうことも。
そこで今回は、インターネット利用時の適切な言動について、考えていきたいと思います。
「インターネット七つの大罪」と題して、ネット上でトラブルの原因となる言動に焦点を当て、私なりの見解で七つの要因を考察してみました。
ネットを楽しく安全に利用する方法を、ご家庭で話し合うきっかけにして貰えたら嬉しいです。
インターネット七つの大罪
もともとの「七つの大罪」は、キリスト教において人が罪を犯す原因とされる悪い感情を指します。一般的に「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」の七つです。
映画やマンガ・ゲームなど、さまざまなコンテンツでモチーフとして利用されており、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
それを、ネット上でトラブルの原因となる言動に注目して、私なりにアレンジしてみました。
では、一つひとつくわしく解説していきます。
傲慢
傲慢(ごうまん)とは、偉そうにして他の人を馬鹿にすることや、人を見下して無礼な態度をとることです。
ネット上での傲慢な行動の例は、
- 顔も名前も知らない相手に、失礼なことを言う
- 自分の知識や経験を誇示して、上から目線な態度をとる
- 自分の意見ばかりを押し付けて、他の人の違う意見を蔑ろにする
ネット上では、相手の顔や表情を直接見ることができないので、相手のことを「自分と同じ人間」として捉えにくくなります。
そのため、相手の気持ちを考えずに、失礼な言葉を投げかけてしまうことがあります。
また、自分の意見に固執するあまり、相手を批判したり、否定したりしてしまうような物言いをしてしまうことも。
このような態度を続けると、他のユーザーやコミュニティから嫌われてしまい、最終的には自分が孤立してしまうかもしれません。
画面の向こう側にいるのは、感情を持つリアルな人間です。相手の気持ちや意見を尊重し、誰に対しても礼儀正しく接しましょう。
嫉妬
嫉妬(しっと)とは、自分より恵まれている人をうらやみ憎むことです。
嫉妬からくる行動の例は、
- 他人の成功を祝福できず、かわりにその人を悪く言う
- 他人の才能や努力を見下し、からかったり、貶したりする
- 有名人がミスをしたり問題を起こしたとき、執拗に叩く
ネット上では、匿名で発言できるため、普段は抑圧している感情や本音を、そのまま発言してしまいがちです。
嫉妬もまた、普段は抑圧している感情のひとつ。他の人が成功している、幸せそうにしているのを見て、自分もそうなりたいと思うのは、人として自然なことです。
しかし、嫉妬心をコントロールできず、相手を傷つけるような言葉を言ってしまうと、相手が嫌な気持ちになるばかりでなく、その発言が拡散され、自分の信用を失ってしまう可能性があります。
他人と自分を比較して落ち込むのではなく、嫉妬心を自分を成長させるためのきっかけにしましょう。
怠惰
怠惰(たいだ)とは、しなければいけないことを怠けることです。
ネット上での怠惰な行動の例は、
- 目的もなくSNSや動画をダラダラ見て、時間を浪費する
- SNSやオンラインゲームに夢中になって、今やるべきことを後回しにする
- ネットの情報に頼りすぎて、自分で考えなくなる
SNSや動画、ゲームで夢中になり過ぎてしまうことは、誰にでも経験があるのではないでしょうか。
私もよくもう少しで終わりと思いながら、気付けば何時間も経過してしまっています。
SNSやゲームは、ユーザーの心理を巧みに利用して、より長く利用してもらうように設計されています。
なので、SNSやゲームを利用する際には、目的を持って使うように心がけたり、自分でルールを設けて利用するなど工夫が必要です。
例えば、SNSや動画は見るものを決めてから利用する、ゲームは時間を決めて遊ぶなど、自分の目的に合った使い方を心がけましょう。
また、考えることを放棄して、有名人や顔も名前も知らない相手に判断を委ねていると、誤った情報を信じてしまったり、他人の考えに流されやすくなります。
そのため、自分で調べて情報を確かめたり、自分の考えを整理したりする習慣を身につけましょう。
虚偽
虚偽(きょぎ)とは、嘘をついて真実でないことを真実のように見せかけることです。
虚偽にあたる行動の例は、
- 間違った情報を意図的に発信したり、拡散したりする
- 事実をねじ曲げて伝える
- 他人の名前やアカウントを使って、本人になりすます
軽い気持ちで嘘を発信・拡散したつもりでも、イタズラでは済まないことも。
誤った情報が人々の間で広がり、本当のことが分からなくなると、パニックや暴動につながる可能性があるほか、経済や社会に大きな影響を与える可能性があります。
その結果、たくさんの人がまちがった判断をしてしまったり、名前を出された人が誹謗中傷を受けたり、法的な問題に発展することも。
現実と同じように、ネットでも嘘をつけば、友達や周りの人からの信頼を損なうことになります。
ネット上での発信には責任が伴います。客観的な事実に基づき、誠実な発言を心がけましょう。
妄信
妄信(もうしん)とは、物事をよく考えないでみだりに信用することです。
妄信に基づく行動の例は、
- 根拠のない情報を信じてしまう
- 情報が信頼できるものか確認しない
- 有名人の言葉を疑わず鵜呑みにしてしまう
- SNSのトレンド情報に疑問を抱かない
インターネットは、誰でも簡単に情報を発信できるため、真偽のわからない情報が拡散されやすい場所です。
有名人が言ったことやトレンドの情報も、必ずしも正しいとは限りません。
情報を確かめずに信じてしまうと、デマを広めてしまったり、過激な考え方に引っ張られたり、詐欺や犯罪に巻き込まれる可能性があります。
なので、情報を確かめるための方法を身につけましょう。
総務省の「【啓発教育教材】インターネットとの向き合い方 ニセ・誤情報に騙されないために」では、ニセ・誤情報に騙されないためにどうしたらよいか紹介されています。とても分かりやすいので、一度読んでおくことをオススメします。
偽善
偽善(ぎぜん)とは、うわべだけは善い行いをしているように見せかけることです。
偽善的な行動の例は、
- 罪を犯した人や不道徳・非常識な人を晒したり、誹謗中傷したりする
- 誰かを悪者だと一方的に判断して叩いたり、煽ったりする
- 自分の意見を正当化するために、事実を歪曲し拡散する
不祥事や事件が発生したときに、悪人を一刀両断して、スカッとするような発信が注目を集めることがありますよね。
加害者(とされる人)を厳しく批判し、怒りを主張することで、共感を呼びかけます。
一見、他人や社会に対して道徳的な発信をしているようにみえますが、実際は自分の都合や利益のためかもしれません。
「いいね」や「シェア」を集めて影響力を高めたり、優越感に浸ることが目的になっている可能性があります。
しかも、こういった行動は問題解決につながりません。
かえって問題がこじれてしまったり、加害者の更生の機会を奪ったり、当事者たちが二次的な被害を受けてしまうなど、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
最悪、命を奪う事にも……。
感情に流されず、冷静に問題の本質を把握した上で、建設的な意見を述べましょう。
炎上やゴシップに関わっている人や発言を見かけたら、反応せず関わらないようにすることも大切です。
侵害
侵害(しんがい)とは、他人の自由や権利などをおかして損害をあたえることです。
侵害に該当する行動の例は、
- 他人の作品を勝手に使う
- 違法にアップロードされた動画や漫画などを閲覧する
- 他人を勝手に写真に撮ってネットにアップする
- 特定の層に対して偏見や差別的な発言をする
- ネットを通じて嫌がらせや攻撃をする(いじめ)
著作権侵害、肖像権・プライバシーの侵害、人権侵害に分けて、かんたんに説明します。
著作権侵害
他の人の作品(音楽、映画、書籍、ソフトウェアなど)を許可なく使ったり、シェアしたりする行為は、著作権侵害になり、作った人たちの努力を蔑ろにする行為です。
違法にアップロードされた動画や漫画を見ることも、作った人たちが得られるはずの収入を減らし、やがては新しい作品が生まれにくい環境を作ってしまいます。
肖像権・プライバシーの侵害
他の人の写真やプライベートな情報を勝手にネットにアップすると、肖像権やプライバシーの侵害になります。
相手が有名人であっても同じです。無断で撮影したり、公開したりするのは控えましょう。
人権侵害
いじめや差別は……言わずもがなですよね。ダメ、絶対。
差別的な発言は、人権侵害や社会的トラブルにつながることがあります。
社会の分断や対立を助長し、対象となった人たちの気持ちを傷つけ、社会全体に悪影響を及ぼします。
他の人の権利やプライバシーを尊重し、嫌がらせや不正な使い方はやめましょう。
まとめ
インターネット七つの大罪
ネットでのコミュニケーションをよりよくするために
- 誰に対しても礼儀正しく接する
- 相手(まわりの人や知らない誰か)の気持ちや意見を尊重する
- 情報源はどこか、誰が発信しているか、他のメディアの扱い方を確認する
- 正しいかどうか確認していない情報を発信・拡散しない
- 炎上やゴシップに安易に反応しない
- 衝動的に発信・拡散しない(一呼吸置いて気持ちを落ち着かせてから)
最後に。
相手がどんなに悪いと感じても、攻撃的な言動は絶対にやめてください。
ネット上での行動や発言は、まるでデジタルな刺青のように長期間に渡って残ります。
ということは「あなたが攻撃的な言動をした」という記録も消えないということです。
自分の行動が過激すぎると、友達や周りの人からの信頼を失い、離れていってしまいます。
後でどんなに後悔しても取り消すことができません。未来の自分のためにもやめましょう。